釣り初め
釣り初め

上五島 宇久島
1999.1.5


【1999年、上五島釣初め】

平成イイ年、今年こそは と願いつつ…

 平成不況の真っ只中、私も四苦八苦しながら年を越すことができ、その意味では「明けましておめでとうございます」。経済環境も好転の兆しが見えぬ今、乾坤一擲、緊褌一番、堅忍不抜の意志で仕事に取り組まないと、何よりも(家族の次に)大好きな魚釣りも出来ない。でもたまの息抜き、気分転換にはやはり広い海で自然と過ごすのが一番ですからね。
 2日、3日と初売りも終わり(車屋さんもやるのです)釣り納めのメンバーで五島に出かけました。押(おさえ)君は初めての五島です。

 釣り納めの帰の道中であちこち電話をしまくり、最近の釣果などあてにならない情報を集め、五島行きが決まり「ばらもん」にお世話になりました。出港は夜の10時、天候は高気圧に覆われ快晴、波高1メートルのベタ凪、最低気温3度、最高気温15度の予報である。私は夜釣りが苦手で、暗い磯は危険がいっぱいなので朝まで船で寝ることにして出かけた。実は釣り納めの宮の浦でまだ暗いうちに足場の岩が私の体重(85キロ)に負けて崩れ、3メートル位滑り落ち、幸い途中の岩にへばりつき何とか海への転落を免れた事が記憶に新しく、アウトドアスポーツは太陽の下でやるのが一番と再確認した事件があったからなのです。

 10時の出港に合わせて準備を整える。夕方佐世保漁具で餌等を購入し、早めに家に帰り持っていく道具を揃える。今回は夜釣りをしないので道具、防寒具共少なめですむ。
 竿も08号、1号、1.2号、1.5号と4本もあれば五島では充分状況に対応できる筈、私は竿を買うときはなるべく細身の軽い物を好み、しなりの曲線が美しい竿を愛用している。女性の好みと似たようなものだ。大は小を兼ねさせるのは比較的簡単だが、小で大を兼ねさせるのは技がものをいい、その緊張感も楽しみである。道具の持っているポテンシャルを120%引き出すのも釣り人の技だと考えている、だから道具類の手入れは人一倍気を使っているつもりだ。

 最後に女房が作ってくれた弁当をバッグに詰め込み8時半すぎ家を出る。予定どおり出港1時間前に浦頭のばらもんに到着。ここばらもんでポーターとして働いている五輪君は次女の中学校の同級生で今回彼の担当している船に乗り、大変お世話になりました。  10時、私達を含めて13名の釣り人を乗せてニューばらもんは、予報通りの静かな海を上五島目指して出港しました。希望の場所を聞かれたので、今日は3人なので広い所と考え、野崎島の南、一ッ瀬にお願いしまーす。馬場君、押君と夜釣りで型のよかとの釣れよるていいよらすぞ、どかんするや、夜釣りばしゅうで、話はすぐにまとまり、船は六島から順に釣り人を磯に降ろしていき、私達の番になった。幸い一ッ瀬には誰も居ない。

 11時半瀬上がり完了。ここは野崎島の比較的大きな離れ瀬で、足場もよく、潮通しもいいので釣りやすい所だ。私は夜釣りの道具を持ってきてないので仕方なく、1.5号の竿に道糸3号、ハリス3号、釣研の電気ウキをセットし夜釣りの態勢をとる。今はあまり寒くないが朝方は冷え込みそうな気配がする。夜空の星がとても綺麗だ。満月が出ていて用心すれば灯りが無くても移動できる。

 夜の海は何か大物が潜んでいるような様相で潮騒が釣り人のはやる心を刺激する。学生時代、初めてラスベガス、琵琶湖畔の雄琴、夜の新宿歌舞伎町に行ったときに美しい壮大なネオンに圧倒され、そのネオンの下でくりひろげられている阿鼻叫喚の世界を想像し、欲望と期待に胸踊らせ、若干の不安も消し飛んで楽しんだ日々があった。そしてそれらは期待を裏切らなかったし、人生観さえも変えさせるような強烈な印象を純真無垢の私に与えた。

 ちょっと比喩が変かなとも思うが、魚釣りをしているといろんなことを考えさせられる。 しかし、日本の西の端、五島の海は私の大きな期待を見事に裏切った。釣りのテクニックは棚に上げといて… カジノでストレート負け、最初に入った飲み屋が暴力バー… そんな感じである。 夜明け前の寒さに耐えてひたすら撒き餌さをしながら竿を振るが、ウキには何の反応もない。だんだんと期待もしぼんできて集中力が散漫となりやがて欠伸が… しかし寝ようにも寝袋もマットも持ってきていない、そのまま岩の平らな所に横になるが、冷たい岩の上でシンシンと冷え込む中寝られるものではない。やっぱり船の中で寝ていた方がよかったといまさら後悔する。馬場君と押君はまぐれの一発を期待し熱心に竿を出し続けている。朝9時半まで釣果0、書くことなし。

 やっと瀬替わりの船がやってきて野崎島の東側、小値賀の港が見える所に瀬替わり。今度は小さな離れ瀬なので私一人で上がる。馬場君達は100メートル位離れた磯に上がった。水深は無いがいい潮が通っている。少し遠投して流しているとウキを見失う。目を凝らしてウキを捜すが見つからない。竿を引いてみると忘れていた魚の感触がする。釣れない釣りばかり続いていたので、魚が喰ったらウキが消えるという初歩的なパターンを忘れていたのだ。寄せてみるとぶり上げるには磯が狭いので慎重に久しぶりに玉網を出した。30センチちょっとのクロだ。その調子で2匹追加し、さあこれからと思っている所へ老夫婦の漁師がのった1艘の漁船が現れ私の前方30メートル付近から網を入れだした。馬場君達がいる磯の方へ行っている。万事休す。そのとき幸運にもばらもんが見えたので大きな仕草で合図を送り再度瀬替わりをする。

 我々は遊び、漁師さんは生活がかかっている。分かってはいるが頭に来る。次の磯は小値賀島と宇久島の間にある岩に大きく白いペンキで「釣り禁止」と書かれた足場のいい広い所だ。いい感じで潮も通っている。遅めの朝食を済ませ、ハリスを1.7号に変え3人それぞれに釣り場を確保し釣り始める。私が陣取ったのは宇久島に向かって右端の釣り座。ここが一番潮通しがよかったから選んだのだが、そう見えたのはここが浅く、遠くまで底が見えるくらいだったから潮が速かったのだ。左側で釣っている馬場君と押君の竿が次々と弧を描いている。次は馬場君が玉網を出している。結構いい型だ。

 私のウキには何の反応もない。だんだん焦ってくる。しびれをきらし一番左側に移動。ここも浅い。他の2人が釣っている所だけが深みになっていたのだ。現場観察能力が甘かった。横の方から彼らのポイントへ少し割り込み数匹釣らせてもらった。
 今日は久しぶりに馬場君がキロクラスを釣り、押君もまずまずの釣果で満足していたので良としよう。夜が寒かったけど楽しい釣り初めの一日を過ごすことができました。

  報 告 者
99アングラーズ  円田 昭
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