肥前鳥島



【肥前鳥島釣行記】

 1999年11月20日
鳥島北岩
鳥島北岩

  肥前鳥島と聞いても何処にある島なのか答えられる人は、磯釣りに精通している人か、海に関するお仕事をされている人ではないかと思います。
長崎県の地図を広げてもはみだしてしまう位置にあるから載っていません。
地所は男女群島と同じく長崎県福江市になっており福江島から南西へ約80kmに男女群島、そこから更に西へ行った東シナ海に豆粒のように小さな三つの岩礁があります。一番小さな北岩、真中にある中岩、一番大きな南岩、これをまとめて肥前鳥島といいます。草木一本無い岩だけの島で、少しでも時化ると波に呑まれてしまう為、よほど天候が良くないと上礁できません。360度の視界が水平線で、地球が球形であることを実感できる長崎県最西端の島で、直線距離でいえば佐世保より済州島の方が近い位置関係にあります。

 明治時代に男女群島から鳥島の海域で珊瑚の漁場が発見され、五島の富江あたりから手漕ぎの珊瑚船でこの海域に漁をしに来ていたというから驚きです。その為多くの海難事故があり、男女群島の男島、東風泊りには千人塚という慰霊碑が建立してあります。最盛期には400隻あまりの珊瑚船が富江にいて、珊瑚の国際市場としても栄えたそうです。また鳥島は、帝国海軍の艦砲射撃訓練の標的にもされていたそうで、そのせいか平坦な所がなく、切り立った岩場ばかりで釣具や荷物を置く場所にも苦労します。落下防止と波にさらわれない様にハーケンを岩の切れ目に打ち付けてロープで固定する必要があります。

鳥島南岩
南岩で朝マズメにオナカ゛?がヒット

 今回の釣行は九月下旬頃、佐世保漁具店社長の津田さんと総合病院耳鼻咽喉科の鬼塚先生と居酒屋で飲んでいる時に男女群島に行く話がまとまり日程を決め、「ばらもん」に予約しておいたもので、残念なことに鬼塚先生は手術が急にはいり、行けなくなられました。男女群島釣行の際はいつも同行する鶴君は結婚式やイベントのビデオ編集の仕事が忙しく釣行を断念、私の同僚の馬場君、津田さんと三人での釣行になったのです。
ところが釣行前日に「ばらもん」から津田さんに、天候が良いので鳥島に行く旨の電話が入り私達三人は「ワクワク」から「ドキドキ」に気持ちが変わり、緊張と期待が入り交じって気合を入れ直したのでした。私は今年の三月に鶴君と行った経験が有りますが、津田さんと馬場君は初めての鳥島釣行となりました。

 午後7時、予定通り出港の準備が整った所で、急に便意を感じ船長の息子さんの大介君に「ちっとトイレに行ってくるけん」といって事務所のトイレに駆け込み、これから始まるドラマをあれこれ想像しながら用を足していると、聞こえていた船のエンジン音が急に高くなり、出港している気配を感じた、やばい!!急いで始末をし、外に出ると案の定船は岸壁を離れ出て行こうとしている所だった。大声で「おーいまってくれー」と叫ぶとデッキにいた人が気付いてくれ、危うく置いていかれる寸前でした。
さあ、鳥島まで4時間の航海だ、寝場所を決め寝る努力を一生懸命するが興奮していて寝つけない。力強い単調なエンジン音が響く中、両隣に寝ている馬場君と津田さんの鼾も負けていない。この厳しい条件の中何時しか寝入ってしまったのは出港前に飲んだ安定剤が効いたのだろう。

鳥島北岩
南岩より中岩を見る

 午後11時、予定通り鳥島海域に無事到着、夜釣りをする人達を中岩に上礁させる。ここの岩はいつも波を被っているので海苔が付いていて非常に滑りやすくとても危険だ。三月に来た時は夜の瀬上げの時、目の前で転落者がでて恐い思いをしたことがある。津田さんと相談し朝の4時に北岩に上礁させてもらうようにした。明日は一日中釣りが出来るので慌てる事はない。それまでゆっくり体力を温存させる作戦にし、寝る事にする。
この海域では珍しいくらいのベタ凪で、船の揺れがゆりかごみたいで心地良い。馬場君は船酔い気味だが、気休めを言ってもしょうがないので無視してペットボトルに詰めてきた水割りを飲んで横になる。

 午前4時きっかりに目が覚める、こんな時は目覚まし時計がなくても時間通り起きられるものだ、体内時計が作用しているのかと不思議に思う。
船内はまだ誰も起きておらず、暗い船中で松永さんを捜す。やっと見つけ出し「もう4時になったよ、船長ば起こしてこんね」と彼を起こし、船内の灯かりを点けると船に残っていた10人程の釣り人も起きだしてきた。
磯釣り師達の憧れの肥前鳥島で釣りが始まると思うと気持ちが昂ぶる。
細心の注意を払い北岩に三人とも無事上礁することができた。
荷物をまとめてロープで固定する、釣りの足場を確保しキャップライトの灯かりを頼りに準備を始める。夜明けまで約2時間あるので電気ウキをセットした夜釣りの仕掛けだ。道糸、ハリス共に8号の太仕掛けだ。どんな大物が掛かっても下手しない限り取り込めるタックルだ。

鳥島北岩
北岩全景

 焦る気持ちをなだめながら撒餌を少し多めに足元の瀬際に入れる。ウネリが時折足元まで洗うが波は穏やかだ。いよいよ仕掛け投入、潮はゆっくりと右方向に流れている。釣り座は南向きで私の左側3m位離れた岩に津田さんと馬場君がいる。2m四方にも満たない釣り座に荷物と二人がいるので身動きがとれない窮屈な所で肩を寄せ合って竿を出している。
電気浮は暗い波間にいい感じで漂っていくのだがなかなか消し込まない。
6時を過ぎて西の空が少し白み始めたころ、突然バチッバチッバチッと音をたててリールに巻いている糸が出で行く、待望のオナガグロの当たりだ。

 出て行く糸を押さえ巻き取りにかかる、良型のオナガだ、太仕掛けなので抜き上げる、50センチには足りないが足元に横たわる美しい魚体に感激!! その後同サイズを2枚追加した、夜が明け明るくなったらピタリと食いが止まってしまった。私の横で釣っている二人には雑魚以外何も当たらないまま時間が過ぎて行く。もうすぐ満潮になる、この釣り座は下げ潮がいい筈だ。