鶴亀



【 男女群島大清掃 「鶴亀騒動」】

富田親子
バラモンの富田社長と息子さん

 7月の初め、いつも磯釣りに行く時お世話になっている瀬渡し船「ばらもん」の松永さんから電話を頂いた。「24日、25日で男女群島の掃除に行きますけど来ませんか、釣りもできますよ」とのお誘いであった。返事を保留して早速私の釣り仲間で一番弟子?の鶴君へ電話を入れ誘ってみる。
お互いに仕事の都合をつけ一緒に行くことにする。聞くところによると、毎年この時期に、男女群島に瀬渡しをしている渡船が協定して釣り場の掃除を行っているそうだ。主にアクアラングを使い海底のゴミ(石鯛やアラ釣りなどで、根掛かりして切り捨てられた仕掛け)を回収するのだ。

 24日、朝8時出港ということで鶴君が6時に我が家へ迎えに来る。途中、佐世保漁具店に寄り、餌と氷を調達し、津田さんの激励を受け出発する。
予定通り七時頃浦頭港に到着。すでに船にはボンベ等潜水用具が積み込まれて普段とちょっと違った雰囲気だ。ばらもんの富田社長に挨拶をしてから荷物を積み込む。釣り道具を持ってきているのは僕等とあと二人だけで、その他の人は潜るみたいだ。
天候も昨日までの豪雨が収まり、まだ小雨は降っているが昼前にはあがる予報で、波も比較的穏やかだ。

 準備が整ったところで浦頭港を出港、男女群島を目指す。今回の清掃作業のスタッフは富田船長以下20名だ。僕等はあまり役に立てないけど… 邪魔にだけはならない様に気を付けようと思う。
 福江島を西に見て南下していくと50分位で男島が見えてきた。船は男島の東側を更に南下し、女島の灯台が見える後浜に錨を下ろした。ここで他の船と掃除の打ち合わせをする為だ。既に長崎の「ひりゅう」鹿児島の「クインエンゼル」が来ている。しばらくして平戸口の「あじか」が来て簡単な打ち合わせをし、それぞれの清掃ポイントへと移動する。

 ばらもんの受け持ちは中の島と花栗島の間の水道である。ここには男女群島でも第一級の釣り場で、シーズンともなると空く間が無いほど人気の磯がたくさんある所である。2人づつペアでダイバーを降ろしていく。「あんた達は釣りばしとってよかよ」と船長のありがたい言葉に甘えて、私と鶴君は普段めったに上礁できないSOSという磯に上げてもらった。今日の男女群島は私と鶴君の貸し切り状態だ。夏場はイスズミやサンノジ等の外道が多くてクロ釣りは不向きということで、男女のクロ釣りは12月〜3月がシーズンとされている。

ヒット
SOSにて、竿がよく曲がっています。後方は帆立岩

 ここは足元から深い落ち込みになっている。案の定足元に撒き餌を入れるとすごい数の魚が群れてやってくる。赤い色した海鯉、イスズミ、サンノジ、その中にクロも混じっている。鶴君の竿は3号のインターライン、私は2.5号の竿を使っている。まず鶴君が足元の群れの中からキロオーバーのオナガグロを引き出す。「ヒクー、ヒクー」とわめきながら、久し振りのオナガグロの引きを楽しんでいる。私は少し遠投してオナガを狙うが食ってこない。足元を甲羅が60センチ位あるウミガメがのんびりと泳いで行った。「鶴亀騒動」の始まりである。

 私の右側で釣っていた鶴君は足元の瀬際と右側のサラシの淵を狙っている。時折大きなイスズミが掛かるが本命のオナガはなかなか姿を見せない。足元に仕掛けを入れていた鶴君に突然、3号の竿先を海中に引き込むすごい当たりが来た。「オーオオオ ヒァー アッ」と言う間にハリスが飛んだ。しばらくボー然とする鶴君。 「ふとかオナガのおるばい」と言いながら、私から5号のハリスを取って仕掛けを作り直している。

 私にもキロオーバーのオナガがやっと来た。私は左のサラシから出て行く潮に乗せて当たりをつかんだ。右側のサラシに浮木を入れ、少しづつ沖に引かれる潮に乗せていた鶴君が大声でわめいた。
「きたー ウォー ふとかばい ヒャー 動かん ワォー 重たかー」「あわつんな、ゆっくりよかけんね」 彼の3号竿が弓なりに大きく曲がっている。 彼が海に引き込まれそうである。重量感ある引きで ゆっくり グゥー グゥー とゆっくり持っていく。竿は限界まで曲がったままである。しばらく堪えていると、やっと浮木が見えてきて、その下になにやら大きい影がうごめいている。
 私はカメラを取り出し鶴君に「もう少し上げろ、写真ば撮るけん」とどなるがなかなか上がらない。やっと何者かが解った。さっき足元を泳いでいた海亀である。 なんとめでたいことだ。

夕日
東シナ海に沈む夕日

 鶴が亀を釣った。 日本広しと言えども鶴が亀を釣ったのを見たのは私だけだろう。しかしさっきまで愛くるしい顔をだして泳いでいた亀が苦しんでいる姿をあまり見たくないので、糸を切ることにし、道糸を手に取り強く引くとハリスから切れた。「後で針ははずれるやろか」と心配したがどうにもできない。
自由になった亀はまたゆっくりと潮に乗ってどこかへ泳いでいった。
 今度は私に強烈な当たりだ、必死で寄せるとサンノジでがっかりする。面倒なのでぶり上げようとしたら2.5号の竿が根元からポッキリと折れてしまった。 「あーあー」とため息をつく。不精したらいかんぞえー…

 お互いに3枚づつオナガを釣り、私にはおまけでキロちょっとのヒラスが来た。
そんなドラマを演じているとばらもんが迎えに来た。磯の上では時計が早く周る様だ、今日は船上でバーベキューパーティーの予定になっている。船は女島のビョウブに他の船と並んで錨を下ろし、パーティの準備をする。

 東シナ海の水平線に沈む夕日は絶景だ!!それを眺めながら飲むビールのうまさは格別で表現のしようが無い!! 自然の雄大さ、素晴らしさ、この感激をみんなに分けてあげたい気持ちになる。
焼き肉と釣りたての魚の刺し身を腹いっぱいに詰め込み、翌日に備え早めに寝ることにする。充実した一日が終わった。